文:いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会 事務局 小野 さおり
初のeスポーツ都道府県対抗戦を通じた茨城県内でのeスポーツの盛り上がりを,これからの産業化につなげていきたい。そんな県の思いから,2020年2月6日にホテル テラスザガーデン水戸にて開催された,「第1回eスポーツアカデミー」。
企業や自治体の方を対象として,eスポーツの現状や関連ビジネスを紹介しながら,一緒にeスポーツを活用した新たなビジネスの可能性を探るものです。
定員50名に対し,大きく上回る70名以上の関係者が参加してくれました。
アカデミーでは,eスポーツビジネスに関連した講師による講演のほかに,eスポーツを実際に体験できるコーナーを設け,eスポーツをより身近に感じてもらえるような工夫を凝らしました。
この日講師としてお招きしたのは,株式会社NTT e-Sports取締役副社長の影澤潤一氏と,株式会社カプコン 常務執行役員 経営戦略室長の荒木 重則氏,そして当プロジェクト事務局でもある,株式会社アプリシエイト 代表取締役社長の和田 幸哉氏の3名でした。
NTT影澤氏は「eスポーツの現状と今後の可能性」をテーマに,2018年の国内eスポーツ市場規模,企業や自治体がeスポーツに注目している現状を紹介しました。ゲーム関連企業だけではなく,最近は食品・飲料メーカーや福祉・人材派遣会社も興味を持っていて,自治体からも相談が来るというお話をしてくれました。講演の後には,NTT東日本社内のeスポーツ部所属選手らによる格闘ゲームのエキシビジョンマッチを披露するなど,会場を沸かせる場面もありました。
カプコン荒木氏は「~地域から世界へ~ 株式会社カプコンのeスポーツの取組み」をテーマに,自社のeスポーツ大会の取り組みなどを紹介しました。大手町,丸の内,有楽町の企業が39社集まってストリートファイター大会を開催した体験談から,eスポーツを触媒としていろいろな業界の方々がつながり,盛り上がっていくという利点を語ってくれました。また,eスポーツを地方創生,雇用創出に生かすためのビジョンを説明し,次へとつながる,持続可能な形を目指して世界で展開していくeスポーツ事業の目標を熱く語ってくれました。
アプリシエイト和田氏は「経営者から見たeスポーツの可能性」をテーマに,自社の新事業としてeスポーツ関連ビジネスを始めた経緯や,新事業を始めたことで人材採用や知名度向上など幅広い効果があったことを説明しました。1年前まではeスポーツを全く知らなかったという和田氏。しかしeスポーツを知れば知るほどeスポーツの秘めたたくさんの可能性に確信を持ったといいます。eスポーツによって社内コミュニケーションを図れた経験談も話してくれました。
第1回アカデミーに参加した企業から,たくさんのお声をいただきました。
常陸太田市内の電気設備会社では,すでに社内でeスポーツチームを作り,昨年の都道府県対抗選手権の予選会にも出場しました。「eスポーツは社内外のコミュニケーションを深めるツールになる」「仕事以外で交流することで,人脈の構築に役立っている」と話しました。
「市場規模などが分かり,ビジネスチャンスがあると確信できた」「eスポーツは今後の成長市場だ」と力を込めて話してくれたのは,筑西市の金属加工会社。都道府県対抗戦をきっかけに関心を持ち,自社の技術を生かしてeスポーツ専用の金属製マウスパッドを開発し,商品化に向けて取り組んでいます。
■「2020年02月07日付茨城新聞」に掲載されました。