文:いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会 事務局 小野 さおり
令和2年2月に2回開催した「いばらきeスポーツアカデミー」は,新型コロナウイルスの影響でずっと開催ができずにいましたが,10月22日(木)に第3回を迎えることができました。
※第1回,第2回の詳細は,活動実績ページよりご覧いただけます。
感染防止策として,今回はオンラインセミナーという形で実施しました。県外も含め,60名以上の方がご参加くださいました。
写真:オンライン会場 株式会社アプリシエイト
第3回のテーマは「高等学校へのeスポーツ導入」。全国高等学校eスポーツ連盟の大浦豊弘理事と,角川ドワンゴ学園 N高等学校の吉村総一郎副校長を講師にお招きし,eスポーツが持つ教育的価値や,eスポーツ部の活動を通した生徒の成長等,その魅力や可能性について講演をいただきました。
大浦氏は「eスポーツを通じた次世代人材育成と地域活性化」をテーマに,毎日新聞社と共催している全国高校eスポーツ選手権でのお話や,連盟が高校eスポーツの発展のために行なっている取組について紹介しました。
高校eスポーツ選手権では,不登校だった生徒や障害を抱えた生徒が参加したことや,女子生徒が決勝戦まで上り詰めたことを話し,「eスポーツは障害や性別を越えて,だれもがチャレンジすることができる価値を持っている」と大浦氏は語りました。
また連盟では,海外高校eスポーツの先進的事例やカリキュラム等を日本人向けにカスタマイズし,日本の高校にeスポーツを取り入れるほか,eスポーツを通じた高校生の国際化も図る「次世代デジタル人材育成」に力を入れていることも明かしました。
参加者からの「高校へeスポーツを広げる活動において,文部科学省の反応はどうか。」という質問に対し大浦氏は,「文部科学省には,第3回全国高等学校eスポーツ選手権より後援をいただくことができた。今後,文部科学省ご協力のもと,大会以外にも活動の場を広げていきたい。」と話しました。
吉村氏は「eスポーツを通じた青春と未来」をテーマに,N高等学校の概要を改めて紹介したうえで, eスポーツ部の活動内容について話しました。
「N高等学校とは,ただの通信制高校ではなく,通信制度を活用し生徒の個性を伸ばす未来の高校である」と,吉村氏は熱く語りました。N高等学校のeスポーツ部は,在校生同士の交流のほかに,外部実力者やプロチームからの指導を受けることで実社会ともつながり,部員同士が成長できることを目指しています。
N高eスポーツ部は,「特別強化選手制度」でプロプレイヤーによる本格指導を取り入れていることや,相手に敬意を持ちお互いに尊重しあうコンセプトを掲げているなど,「ただ競うだけ」でなく,人間的成長を目的としていることを吉村氏は語りました。
また,参加者からの「eスポーツコーチにも報酬はあるのか」という質問に対し,「もちろんある。eスポーツを通じた就職先の中で,eスポーツコーチという進路を生徒に根付かせることもできる。」と,吉村氏は話しました。
今回のアカデミーを通し,参加者からの感想の中には,「ネット世界は本能むき出しの感情表現をする人が多い印象。人格形成が未熟な若年層への影響は多大で,スポーツと冠するのであれば十分な『ネットリテラシー教育』が必要であると改めて感じた。」というお声もありました。
私たち推進協議会も,今回のアカデミーで学んだことやいただいたお声を通し,今後の高校eスポーツ導入に向けて大きな前進を図れるよう努めていきます。
■「2020年10月23日付毎日新聞(地方版)」に掲載されました。
毎日新聞『「学校を変える」 eスポーツ講演、オンラインで /茨城』